エズラ1章1節〜18節

「主の時が満ちて」

 

 イスラエルの民は北と南に分裂した後、北イスラエル王国はアッシリア帝国に、南ユダ王国はバビロン帝国に滅ぼされた。ペルシア帝国は次第にバビロン帝国に覆いかぶさるように領土を拡大していき、バビロン国内の混乱に乗じて戦いを挑み、ついにBC538年にバビロン帝国を滅ぼした。ペルシア帝国の王クロスは宗教に寛容な政策を採り、イスラエルの民にエルサレムに帰って神殿を再建するよう命じる。これにより、70年のバビロン捕囚が終わりへと向かう。エレミヤに語っておられた預言が、その通りに実現した。

 神様は、異教の王を用いてエルサレム帰還の扉を開かれた。こうして分裂していたイスラエルの民は再形成され、神の民としての歩みを再び始めることができた。エルサレムへの帰還は、神様の救いの奇跡として記憶されるべきものである。

 「主はクロスの霊を奮い立たせたので」(1)とある。また、帰還を決意したイスラエルの民は、「神にその霊を奮い立たされた者」と記される(5)。神様はクロス王とイスラエルの民の両者に働きかけてくださって、“エルサレム帰還という救い”を成し遂げてくださった。神様は私たちが救われるために、先頭に立って働いておられる。神様ご自身が、人の救いのために「奮い立って」くださるのである。

 「奮い立つ」とは、目の前にある困難を乗り越えて立ち向かうことを意味する。神様は人を良いものとして創造されたが、神様に背いて約束を破り、罪を犯した。神様は人に対して、裏切られた悲しみを持っておられる。預言者はその悲しみを嘆いた。「牛はその飼い主を…知っている。それなのに、イスラエルは知らない。わたしの民は悟らない。」(イザヤ1:3) しかし神様は、裏切られた悲しみを乗り越えて(奮い立って)、救いのために働いてくださる。ここに、罪人を救う神様の愛がある。

 

「ペルシアの王クロスの第一年に、エレミヤにより告げられた主のことばを実現するために、主はクロスの霊を奮い立たせたので……。」(1)