ルカの福音書19章36〜40節

「石が叫びます」

(しゅろの日曜日)

小林和夫師


 イエス様がロバの子に乗ってエルサレムに上って行かれると、群衆は道に自分たちの上着を敷いて即席の行幸道路を作りました。そこで自然発生的に始まった賛美の歌声は、詩篇118篇の「ホサナ(どうぞお救いください)」でした。

 詩篇118篇は、現在直面している苦難や将来の漠然とした不安に立ち向かう、希望と勇気の湧き上がる詩です。群衆は、これまで王宮や神殿の儀式に用いられてきたこの詩篇を、イエス様に対する賛美としました。パリサイ人たちはこれを神性冒瀆と考え、イエス様に「お弟子たちをしかってください」(39)と執拗に食い下がりました。 

 イエス様はパリサイ人たちの言論弾圧に一歩も引くことなく、「もしこの人たちが黙れば、石が叫びます」と言われました(40)。真理に目覚め、救い主を待ち望む民衆を、力づくで抑えこむことはできません。今日でも、政治・教育・医療 宗教など、あらゆる世界で、権力は言論を封じ込めようとします。しかし真理に逆らえば、必ず破綻します。

 「石が叫ぶ」。預言者は、暴力によって人々を滅ぼし自分のために不正な利得をむさぼる罪を糾弾して、「石は石垣から叫ぶ」と語ります(ハバクク2:8-11)。イエス様も同じ意味使いです。神の恵みをないがしろにすれば、石は必ず叫び出し、危機的な状況を作ります。石が叫び出す前に、人は顧みなければなりません。

 サグラダ・ファミリア教会には、その入り口に一つの石像とLK22.62と刻まれた文字があります。イエス様を3度否定したペテロの姿です。神とお会いするのは、悔い改めから始まることを示しています。この思いが継承されなければ、石が叫び出すのです。

 

【聖書】40節「わたしは、あなたがたに言います。もしこの人たちが黙れば、石が叫びます。」