ルカの福音書20章19〜26節

「神のものは神に返せ」

 

 ユダヤの建国記念日とも言うべき「過越の祭」を準備している時でした。民衆は、出エジプトの栄光を夢見てローマ帝国からの独立を願い、その期待のあまりイエス様を「ホサナ」と迎えました。その一方で、パリサイ人や律法学者は自分たちの名誉や既得権に執着し、イエス様に対する憎しみを募らせ殺意を抱き、「義人を装った間者」を送ります(20)

 間者は語ります。「カイザルに税金を納めることは、律法にかなっているか、かなっていないか。」(22) これは難問です。どう答えても、わなにかかるようにできています。しかしイエス様は「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」と答えられ、人々を驚嘆させました。

 「カイザルのものはカイザルに返せ」とは、現実問題としてローマの支配を受け入れるようにということです。ローマの支配の中で、神殿を含めたすべての営みがある。それを認めよ、と。しかし、それで終わりません。「神のものは神に返しなさい」。そこに神様のご支配もある。実生活において、神様を神様として心から信じ従うようにということです。

 「神のかたち」に造られた私たち人間は、神様の肖像を刻まれたコインのようです。その肖像は摩耗して見えなくなっています。イエス様は十字架と復活の贖いによって、私たちの摩耗した「神のかたち」を再創造してくださいました。そんな私たちは、自分のために生きるのでなく、イエス様のために生きるようにされました。「神のものは神に返す」。これが私たちの新しい生き方です。

 

「では、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」(25)