士師記14章1〜20節

「勇士サムソン」

 

 サムソンは士師の中でも、極めて特異な人物である。その特徴は人並み外れた怪力である。ぶどう畑でライオンに遭遇した時、サムソンは「まるで子ヤギを引き裂くように」ライオンを引き裂いたと記されている(6)。また、ある時にはペリシテ軍に一人で立ち向かい、落ちていたロバのあごの骨を武器にして1000人を打ち倒したこともあった。

 しかしサムソンは、怪力を誇って高ぶった生き方をしてしまう。彼は生まれた時からナジル人として神の命令に厳格に従うよう教育されが、神に従うことなく、自分の欲望のままに生きた。両親の反対も聞き入れず、敵対関係にあるペリシテ人と結婚した。結婚式の列席者に“賭けをしよう”と誘い込み、人々を騙して晴れ着を巻き上げようと画策した。その結果、結婚相手に裏切られ、ペリシテ人を敵に回して全面的な争いに巻き込まれることになる。サムソンは孤立しており、イスラエルの民もサムソンに味方しなかった(15)。サムソンはペリシテ人の遊女デボラに恋をするが、またしても騙され、怪力の秘密を明かしてしまう。力を失ったサムソンは捕らえられるが、最後には再び怪力が与えられ、神殿の柱をへし折ってペリシテ人と共に下敷きになって死んでいく。しかしその死は英雄の死でもなければ、人々を救うための犠牲でもなく、自分が蒔いた種を刈り取っての死であった。

 それでもサムソンの意志とは別の仕方で、神は人々に与えた約束を守っておられた。サムソンが生まれる前、神はその両親に“その子はイスラエルをペリシテ人の手から救い出す”と約束しておられた。サムソン自身は結婚を考えるほどペリシテ人に好意的だったが、結果的にサムソンによってペリシテ人は大損害を受けた。神は約束通り、イスラエルの民を救われたのである。

 サムソンの時代にも、神は人々の救いを考えていてくださったように、今の時代にも神はおられ、私たちの救いを考えていてくださる。神がおられるから、祈る意味がある。新型コロナウィルスが世界に大きな痛みを与えているが、この試みが早く過ぎ去るように祈ろう。病んでいる人、医療従事者のために祈ろう。